ソープ嬢にハマりかけた話

 昨日はいつにもまして寝付きが悪かった。眠れない夜に佐伯一麦の初期の小説を読んでいたら、今で言うピンサロに通い詰めるエピソードがあり、むかし自分もそれに近い状況になった事を思い出した。

 当時、営業の仕事をしており、売上、新規開拓などのノルマに追われ心身ともに消耗していた。そんな近況について同じように仕事で消耗していた友人と愚痴を言い合っていたら友人の行きつけの性風俗店、要するにソープの話になった。ストレスが極限に達したときは休日の前日に予約を取り朝一で遊ぶのだという。

 その後、ブルマンデーを控えた日曜の昼下がりに無精髭を生やし部屋着のままその友人の行きつけのソープへ行くことにした。月曜から金曜の仕事を何とかやり遂げ、土曜に泥のように眠り、何をするわけでもなく無為に過ごす日曜に嫌気がさして散財したい気分だったんだと思う。

 予約せずに店に入りそのままフリーの客として準備ができるのを待った。店員に呼ばれ一人階段を上り廊下を曲がると、その日の相手の子が立っていた。

 一言で言うと自分の好みをそのまま具現化したような子だった。部屋に入ったところにある鏡に写る自分の汚い格好を見て、こんなことなら、ちゃんとした格好をしてくればよかったと後悔した。そのとき自分は歯磨きすらしていなかった。腰のあたりに男の名前と思われるアルファベットの刺青があったがそんな事は大した問題ではなかった。

 とりあえず、自分を覚えてもらおうとその子を褒め称えた。そしてひと通りの事が済むと次の指名を約束して帰った。

 そしてその二週間後、約束通り、髭を剃り、歯磨きをし、一張羅を着こんで、その子に会いに行った。そしてその二週間後にも同じようにその子に会いに行った。

 そのときその子が来月でその店をやめる事を知った。地元に帰りデリヘルを経営するつもりだという。その子にハマりかけていた自分は、辞めても金を払って君と遊びたいと言った。

 結局、デリヘルを開業したら連絡するという約束をして自分のケータイのメモ機能にその子のメアド(その頃はまだLINEは存在していない。)を打ち込んでもらい、後で返信をしてメアドを交換することにした。

 達成感を覚えつつ家に帰りメモに打ち込まれたメアドを切り取りアドレス帳に追加しようと貼り付けを選択したところ何の文字列もそこには無かった。メモに戻り再び貼り付けを選択しても同様だった。今考えるとバカバカしいが、そのときは切り取りではなくコピーを選ばなかったのだと激しく後悔した。

 笑われることを承知で言うとその子が辞めるまでに、メアドを聞くためだけにまたその子を指名する考えもあった。しかし友人との約束などで予定が立て込み結局その子とはそれっきりになってしまった。

 もしメアドの登録ができていたら、どうなっていただろうかと考える。もしかしたら月に一回のペースでその子に会いに高速道路に車を走らせていたかもしれない。

 結局その子には交通費、指名料含め十万円近くを費やした。その支出が本当に必要だったのか、いまだに結論が出ない。